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ほんの少しだけ、春が近い九州【競馬マスターズ 坂田博昭】

佐賀

2025年03月13日競馬マスターズ

 ブロードキャスターの坂田博昭です。今回は、佐賀競馬場からのリポートです。まずは、3月8日土曜日。レディスジョッキーズシリーズ(LJS)佐賀ラウンド当日の様子から。

 私としては、今年初めて佐賀競馬場にお邪魔しました。昨年の12月以来かな。九州はもうすっかり春……と思いきや、競馬場のある鳥栖では本州より少し暖かい程度。季節が進みはまだこれからという感じでしょうか。

開会式。今年の出場騎手は9名。確かに、ふたりとか3人とかしかいなかった一時期のことを考えれば「増えてきた」とも言えるのかも知れません。増えてきたから、これでいいのか。もう十分なのか。それとも、どういうことがこの業界に不足しているのか、あるいはもっと広く世の中で、どういうことが本当に必要なのか……そういうことに思いを致すのがこの大会。ただ単に女性騎手が揃って「華やか」「客が集まる」だけでは、なかなか先には繋がっていかないイベントです。

この日3月8日は、国際女性デー。この記念撮影は「それ」を思わせる催しでした。

LJSは何のためにあるのか。どういうことを、どういう人たちに向かって訴えるイベントなのか。そこを実際に行う物事の中でハッキリさせないと、このイベントは早晩存続が難しくなります。人気があり売り上げも上がり、興業として不動の存在感があるボートレースの女子戦とはやはり違う。ただ単に「『女性』という切り口があるよね」というだけでは、その場限りで終わってしまう。

このイベントの「意義」を、競馬内にとどまらず競馬外の人々に向かっても、強く、そしてわかりやすく訴えていく工夫を、一つひとつの催しから施していくことが、求められているのではないでしょうか。

宮下瞳騎手。やはりこの中に入ると、プレー振りでは断然の存在感があります。この日は、大会の対象レースの前にひとつ、2レースでいわゆるエキストラ騎乗の依頼がありました。

騎乗馬を管理する北村欣也調教師に、レースの前に話を聞きました。

「今回、一発を狙って依頼しました。減量もあるし、思い切って先行してくれたら良いところがあるのではないかと思って。」

果たして、レースでは人気に推されていた馬の出遅れもあって、果敢にハナを奪う狙い通りのレース。ゴール寸前まで粘り「やったか!?」とも思わせましたが……内外からの強襲を凌ぎきれず、勝ち馬からクビ・アタマ差の3着。惜しい……。

北村調教師は、レース振りには満足していました。

「さすが、これだけ長く続けて活躍しているだけのことはあるね。」

そういうことなのだ。そしてその「長く続けて」来た、決して平坦ではない道のりが、ここまでにあってのいまなのだ。そういうことが、単に競馬のレースという枠を越えて伝わることが、LJSの意義なのではないでしょうか。

LJSの本番レースの前に、すごいプレーを見たなと。私は素直にそう感じました。

 続く第3レースがLJS第1戦でした。

昨年このシリーズを優勝した木之前葵騎手が、捲り追い込み。今年の大会初戦を制しました

上がって来て、破顔一笑。

 この日の彼女、場内での挨拶とかこうした取材の場で度々、「宮崎からも応援に来てくれている」と話していました。子どもの頃、どうしたら騎手になれるかとあらゆる所に相談に行った中に、ある馬関係の仕事をしている夫妻と出会い、それが大きな縁になったそうです。この日はその方々は来場されていなかったようですが、パドックにはおそらくその「応援団」のものとおぼしき横断幕が出ていました。

“ふるさと応援団”の文字が、なんだかとても暖かく感じられました。

 4レースで行われた第2戦は、岩手の関本玲花騎手が果敢にインを突き、早めに先頭に立った宮下瞳騎手をクビ差交わして勝利!調教でアクシデントがあって身体が痛いとずっと言っていた彼女でしたが、レース振りは見事でした。

宮下瞳騎手は、ここでも2着……。上がって来て、この残念そうな表情。レースの流れの中のこととは言え、早くに行って先頭に立ってしまったことを悔いていました。

 深澤杏花騎手は、残念ながら2戦して7着6着と奮いませんでした。こちらの活躍は、次週の園田に持ち越し、ということで。また改めて期待しましょう。

この日2戦して、1着3着の木之前葵騎手が佐賀ラウンドの優勝者として、勝ち名乗りを受けました。インタビューの模様は、佐賀競馬オフィシャルYoutubeライブのこのあたりから

 戦いの結末。3月12日水曜日、園田ラウンドの様子は、次回リポート出来ると思います。

 LJSは終わっても、レースはまだ終わらない。

 ナイターレースの時間帯になり日が落ちると、空気がヒンヤリしてきます。土曜日の夜は、日曜日に比べて来場客が少し多めに残っているのかな。

 この日、夜には、3月30日に行われる重賞・はがくれ大賞典に向けてのステップとなるオープン競走・鏡山特別が行われました。勝ったのは、南関東から転入して来て4戦目となるコスモファルネーゼでした。

 2走前には2年ぶりの勝利を挙げ、前走は姫路・白鷺賞にも挑戦。ここに来て堂々のオープン勝利と、当地での活躍に向け機が熟してきた感じがあります。

「強かったですね。転入初戦で自分が乗ったときよりも、状態が良くなっているように感じました。ただ本番(はがくれ大賞典)はメンバーも強くなりますからね……。」

……とは、今回騎乗した石川慎将騎手。次走が試金石になりそうです。

 もう一頭、注目の馬が佐賀に転入して来ました。ダートグレード競走の優勝歴があるデルマルーヴル。転入初戦の今回は、勝ち馬から5馬身離されたものの、競り合いで2着を確保。

「十分、十分。追い切りも行けていなくて、馬体重がプラス11kg。これなら次が楽しみです」

 こちらは、管理する山田徹調教師が笑顔で、次走・はがくれ大賞典への意欲を話しました。

 はがくれ大賞典は、全国交流で他場からの遠征馬もやってきます。迎え撃つ地元勢も、意欲は十分。3月30日日曜日、見逃せないレースになりそうです。

 そのまま、翌日3月9日日曜日も佐賀競馬場で引き続き取材しました。

 佐賀競馬場は、国道から競馬場へと入っていく短い通路に、桜の木があります。つぼみはこんな感じ。もうあと少し。花の季節が近づいていることを感じさせます。

(表示されているオッズは、馬券発売中のもので最終オッズではありません)

この日のメインレースは、古馬の重賞・九州クラウン(1400m)。秋から冬にかけて活躍して来た馬が揃い、興味深い組み合わせになりました。

短い距離に適性のある馬が揃って、戦前からペースは速くなりそうな予感……。

 JRA時代から短い距離に適性のあるラインガルーダが、予想通り先手を取ろうとしましたが、近歴一息でも実績のあるフェブキラナも譲らず、最初の3ハロンが36秒7というハイペース。追い掛ける各馬の仕掛けが注目されました。

 外を回ってネオシエル。下がってくる馬を交わしながら内から行ったダイリンウルフ。直線では先に捲ったネオシエルを、外に持ち出したダイリンウルフが追い掛け、際どい争いに持ち込みました。

 ネオシエルが、アタマ差だけしのぎきって勝利!これで10連勝となり、古馬重賞は初制覇となりました。

 元々は、昨秋の佐賀JBCデーに行われた「九州産グランプリ」を目指していましたが、休養からの復帰が遅れて12月に戦列に戻って来ました。快進撃は続き、とうとう重賞まで制覇。2歳時から活躍しており力があることはわかっていましたが、それで尻すぼみとならず更に上を目指せる走りを見せ、期待感は高まります。

 ダイリンウルフ(写真前)も、惜しい競馬でした。レース後の談話では山本咲希到騎手が「前の馬が下がってきた分、内を回らざるを得なかった」という趣旨の話をしていたと聞きました。このあたりは展開のアヤ。秋まで門別にいたときよりも、脚力とその持続力は増しているような気がします。

 ネオシエルについて、真島元徳調教師の話

「途中までは本来の走りでなかったので心配しましたが、3コーナーからはいい行き振りで大丈夫かなと思いました。レースが続いていたために攻めきれず、少し重かったのかも知れませんね。」

 ネオシエルは1開催開けて新年度から再始動。ダイリンウルフは3月後半の次開催にも出場の予定だそうです。

石川倭騎手の勝利騎手インタビューの模様は、佐賀競馬オフィシャルYoutubeライブのこのあたりから

 メインレースが終わって19時前。九州ではこの時刻に綺麗な夕焼けの景色になります。日も大分長くなってきましたね。

 次回は、園田と名古屋からお伝えします。