9月30日水曜日執筆。担当は、坂田博昭です。
今回は、金沢競馬場の話題をお送りします。9月22日火曜日は、シルバーウィーク真っ只中の「国民の休日」。ダートグレード競走の白山大賞典Jpn3当日に、競馬場にお邪魔しました。

やっぱりね。ビッグレース当日は、こういう晴天じゃないとね。
本当に、どこに行っても天気が悪かったですから。先週に続き、今週も素晴らしい晴天の競馬場の様子をお伝えすることが出来て、私も嬉しいです(笑)。

第1レースはお昼頃。メインレースは夕方。私は、2台目のファンバスで結構早めに11時頃には競馬場に到着したのですが、すでにこうして多くの来場客がいました。
この日は祝日とあって、家族連れの姿が大変多く見られました。イベントも、子ども向けのものがきちんと準備されていたことが、家族連れを誘引したのかもしれません。

そんな家族連れがぐるりと取り囲むように行列を作っているこちらのブース。なんでも、使用済みの蹄鉄でアクセサリーを作ってみる、という子ども向けのワークショップなんだとか。

こんな風に、蹄鉄にカラフルな糸を巻いたり、トッピングをつけていったりします。子どもたちが、ブースの担当者の方にやり方を教わりながら、思い思いの飾り付けをしていました。

出来上がると、こんな感じ。なかなか、ですよね。これは確かに、自分で完成させたら子どもたちは嬉しい。

こちらは、ジョッキー体験が出来る木馬。ちゃんと騎手服が用意されていました。元JRA騎手の水口優也さんが行っていたイベントみたいです。

NAR(地方競馬全国協会)もこのようにブースを出して、地方競馬の社会貢献や、騎手の候補となる地方競馬教養センターの入学募集の取り組みをしていました。

そのブースでお手伝いをしていたのが、こちら。騎手候補生の栁澤蓮さん。そういえば、夏からは来年デビューを目指す騎手候補生たちの実習の季節ですね。
こちら、詳しい話はまた取材に来ようかな。ひとしきりブースでお手伝いした後は、検量室で「鞍そうじ」をしながら、元気よく働いておりました。

パドックにも、序盤のレースからこのように来場客が集まります。パドックに人が集まると、やはり競馬が賑わっている感じがしていいですよね。

スタンドの上の方に上がってパドックを見ると、裏手はこのように大きな沼になっています。河北潟、っていう、とても大きな湖沼なんですね。
昨年はこの競馬場が水害に見舞われました。競馬場内の低いところは、人の腰まで水に浸かったというのだから、本当に大変なこと。競馬場自体がこういう場所にある、ということがわかると、この場所で競馬を続けてきたことのかけがえのなさがよりしみじみと感じられます。

レースには早い時間帯から声援が飛び、大変盛り上がった一日になりました。
ここからは、レースの話。
取材日の前日、9月21日に通算500勝を達成した柴田勇真騎手に、話を聞きました。

デビュー12年目の32歳。今年は昨年よりも少しペースの速い60勝目が、通算では区切りの500勝となりました。
「ちょっと時間がかかったな、という思いですね。」
まずは率直な気持ちから話は始まりました。

「もっと勝てるレースがあったな、っていう思いですね。」
どうやら、その「勝てるレースがあった」の意味は、結構深いものがあるみたい。
「調教師、厩務員、馬主、そのほか……馬に関わっている色んな人のことを考えると、(負けたレースについて)勝たせられなかったのかな、と思います。」
競馬というスポーツに携わる、騎手という立場の興味深さでもあり、他のスポーツの選手とはまた異なる難しさ、複雑さが、言葉に表れていると感じました。
「馬の状態面は、それぞれの時で色々あります。でもそれは言い訳になりますから。」
そのときその状況の中で、ベストのプレーが出来たかどうか。常に自問自答しながら日々の仕事に臨んでいると言うことでしょう。
「500勝も、それ自体はそこまで意識していませんでしたが……なるほど、次の区切りは1000勝になるんですね」
現実的に、そこに向けての「意気込み」というよりも、また次の区切りに向けて歩き出した彼の姿と言葉に触れた。そんな感じがしました。
2000勝とか3000勝とかした騎手の話とはまた異なる、この立場だからこその思いの一端を、知ることが出来ました。
いよいよ、この日のメインレース。白山大賞典Jpn3(2100m)。

なんと言っても、主役はアウトレンジ。Jpn1勝利にあと一歩のところで届いていないこの馬が、1ヶ月半後に控えるJBCクラシックでの悲願達成に向けて、同じコースで行われるこのレースをステップに選びました。
「勝ち負けも勿論重要ですが、次のJBCに向けて、このコースを一度走らせることで勉強出来ればと思い参戦しました。」
……とは、アウトレンジを管理する大久保龍志調教師の話。
「賞金を持っているから、言えること、ではありますけれども。」
と、話の後に続いたのは、やはりJRAの馬たちにとってのダートグレード戦線の難しさ。すでに賞金を稼いで、出たいレースに出られる有利さをフルに活かした、今回の参戦と言えます。
実績を買われたアウトレンジが、このレース断然の一番人気。ところが……レースはやはりそう簡単な話ではありません。

スタートしてから、半周してこの写真のように1周目のゴール板前を通過するまで、ほんとうに色んなことがありました。
アウトレンジが好発を切り、ハナに立とうという勢いでした。でも、ユメノホノオが外から並んで、圧をかけてきました。
アウトレンジが控えたところに、各馬が外から並んできて、アウトレンジは馬群の内に包まれました。
と思ったら出遅れたクールミラボーが、馬場の重い内ラチ沿いを通って巻き返してきました。
で、結局、決まった隊形がこの写真の形。決して自然体ではなく、各馬それぞれのプレーがある中で、脚も多少使って出入りもありつつ、ここからレース後半の勝負に挑みました。
とは言え、こういう争いに全く付き合わなかった馬もいて、そういう馬は位置が後ろになっていたとしてもいわゆる「サラ脚」。

ホウオウルーレット。スローペースの中で前が色々やり合ってくれて、まずその時点で展開が向きました。まくりに行ったタイミングも、丁度各馬隊列が決まって一息入れたくなり、ペースが一層緩んだジャストの仕掛けでした。

アウトレンジは内に包まれていたから、勝ち馬のまくりに対応出来ませんでした。
あのレース序盤の攻防。必ず「意図」と、成り行きを受けての「考え」とか「思ったこと」があったはず。そこが見ている客側に全く伝わらないのは、スポーツとして本当に残念です。そういうことが伝わることで、馬や騎手を巡る「真実」が客に正しく理解される。それがあるから、スポーツって、あり続けられると思うんですよね。
少なくとも、私はレースを見ていて、知りたかったです。なぜなら、次また恐らく馬はJBCクラシックに出てくるだろうから。負けたことを「失敗」と捉えるとしても、馬にとっても馬の周囲の人々にとっても、この日して良い失敗は必ずあったと思うんです。それは、調教師が話していた「勉強」の部分。次走の走りを、今日の走りと比べて考える。これまさしく、競馬がスポーツたる所以です。
談話がない中で言えることは、非常に前向きな意味で、この日のレースが「本番じゃなくて良かった」。ひとまずそれだけ。次走の人馬の走りに注目しましょう。

2着のクールミラボー。出遅れたはずなのに、いつの間に先頭に?と思った方も多いのではないでしょうか。金沢は、検量室の外からパトロールビデオの映像が見えるので、窓越しにそれを確認しました。1周目3コーナーから、馬場が重くて皆が避けてあいていた内ラチ沿いを狙っていき、騎手が馬を前へと促していました。
パトロールビデオを見て、これはものすごいプレーだと私は思いました。思い切りも割り切りも必要。そしてそれが、一瞬の判断で行われたということ。もっとこのプレーは、レースの振り返りの中でクローズアップされ評価されてしかるべきものだと、私は感じたのですが……それも、騎手の談話の裏付けがありません。なので、残念ながらこれも書き切れず。スポーツのプレーとしたら、実にもったいないことです。この馬もまた、勝ち馬に負けず劣らず、凄いレースをしました。

地方最先着は、ダンテバローズの4着でした。小牧太騎手と新子雅司調教師は、このように笑顔でレースを振り返っていました。
このふたりの談話を含め、この日のレースのリポートを、NAR公式のウェブハロンに書かせて頂きました。詳しくは、そちらをご覧下さい。

岩田康誠騎手。嬉しそうだったな。

JBC当日が、待ち遠しくなりました。私は、金沢ではなく門別行きが決まっていますが(汗)。でも、事前に金沢競馬場の様子とか、馬たちの戦いを見ることができて良かった。本番のJBCクラシック、私は門別からレースを楽しみます。