ばん馬の食事や腸内環境と病気や故障の関係性について ~帯広畜産大学との共同研究紹介~
はじめに
帯広市と共同で実施している「ばんえい十勝応援企画」。2020年度からの取り組みとして、ばん馬の健康管理・疾病の未然防止につなげる研究を帯広畜産大学と共同で取り組むこととなりました。
このページでは、その内容について分かりやすくご紹介します。
この研究は、皆様の楽天競馬でのばんえい競馬における馬券売上の一部を還元して研究費を拠出しております。
ぜひ楽天競馬でばんえい十勝の馬券を買い、楽しみながらばんえい競馬の支援にご参加ください。
ばんえい競走馬の現状
ばんえい競馬の競走馬頭数は年々減少しています。
2002年時点の約1,500頭から、現在は約700~800頭で推移しています。一方で、年間トータルのレース数は変わっていないことから、競走馬1頭あたりの年間平均出走回数は増えてきており、近年では平均約20回/頭で推移しています。
競走馬1頭あたりが1年を通じて1開催(2週間)に1回は必ず出走し続ける計算になります。このことから、レースでの好成績を挙げるだけでなく、万全の状態でレースに出続けられるよう、競走馬の健康を維持・管理することが求められます。
共同研究内容
この研究では下記3つの関係性に着目します。
1.疾病(病気や故障)
2.飼料(食事)
3.微生物(腸内環境)
ばんえい競走馬をより健康に管理するための方法を、栄養学・微生物学の観点から解明することをめざします。
草食動物が自分で食べたものを分解し、エネルギーとして利用するためには、腸などの消化器官ではたらく微生物を必要とします。
これらの微生物が安定して正常にはたらき、食べたものをきちんと分解できることが非常に重要です。
レースで高成績を挙げることを求められる競走馬においては、普段馬たちが食べている“牧草”よりも、分解されやすく栄養価が高い“穀物”を多く与えられる傾向にあります。
このような食事は、馬本来の食生活とは異なるため、腸内の微生物バランスが乱れてしまい、疝痛(腹痛)や蹄葉炎(ひづめの炎症)といった病気や故障の原因になってしまう可能性があります。
ここからは、1つ1つの要素に関するデータを把握し分析する方法について説明します。
1.疾病(病気や故障)
病気や故障の実態をつかむ
まずは、疾病(病気や故障)についてです。
帯広競馬場内には競走馬の診療所があります。
そこには厩舎ごとに馬のカルテ(診療記録)が保管されているので、これをデータとして活用します。
カルテは紙で保管されているため、年度や厩舎ごとに、どのような病気や故障が多く見られたのかをすぐに把握することが難しい現状です。
これらを1件ずつ電子データへ変換し集計。
これにより、例えば、2019年度のある厩舎では、呼吸器系や運動器系の病気や故障が多い、といった傾向の把握が可能になります。
このような集計を続けることで、厩舎ごとに病気や故障の傾向の違いはあるのか、また、それらの傾向は年度ごとで違うのか、といったことを明らかにします。
2.飼料(食事)
食事の種類や量、割合を明らかに
競走馬の食事(エサ)は、大まかには牧草系のものと穀物系のものに分けられます。
これらは種類によって含まれている栄養成分が違います。
一例として、牧草系の「チモシー」と穀物系の「燕麦(エンバク)」の栄養成分を比較すると、チモシーでは繊維質やミネラルが多く、一方でエンバクでは糖質や脂肪が多く含まれます。多くの厩舎ではそれぞれのエサを組み合わせて与えていますが、厩舎によって使うエサの種類や量、割合は異なります。
そのため、厩舎ごとでエサの内容と、トータルの栄養成分がどれくらい異なるのかを明らかにします。
3.微生物(腸内環境)
腸内環境の実態をつかみ、
エサや病気・故障との関連を調査
腸内の微生物の割合を明らかにするため、ばん馬の糞便を試験に用います。
糞便の微生物の種類や割合は、腸内の微生物の種類や割合と似ていることから、糞便を解析することで腸内の状態の推測が可能です。
また、糞便を解析対象とすることで、ばん馬に負担をかけることなく研究を行うことができます。
この糞便から微生物の遺伝子を取り出し、帯広畜産大学内の遺伝子解析装置を使って、糞便内にいる微生物の種類やその割合を明らかにします。
この解析をより多くのばん馬で行うことで、個々のばん馬の微生物の割合を明らかにするだけでなく、厩舎ごとの微生物の割合に違いがあるのかどうか、エサによる影響がどれくらい大きいのかなどを分析します。
腸内微生物の中には、病気や故障を引き起こす関連菌がいることがこれまでに報告されており、それらがばん馬においてどれくらい存在するのか、また関連菌が多いばん馬では、どのようなエサの内容になっているか、実際のカルテと突き合わせて、エサや病気・故障との関係を分析していく予定です。
※なお、これらのデータ分析に際しては、厩舎名や個々のばんえい競走馬名を匿名化し、第三者への漏洩防止を徹底します。また、本研究は飼養管理と疾病の関係性を明らかにするものであり、厩舎個別の飼養管理方法を評価・批判するものではありません
最後に
馬においては、食事(エサ)と腸内環境(微生物)、そして疾病(病気や故障)は密接に関係しています。
これら3つの要素を統合した研究を進め、健康なばん馬と病気や故障の多いばん馬のそれぞれのえさの内容はどのようなものか、腸内微生物はどのような割合をしているのかを調べ、考察していきます。
これにより、病気や故障を未然に防ぐ食事管理の方法を提案できるよう、研究を進めます。
さらには、帯広競馬場内の競走馬のみならず、ばん馬の生産現場にも研究成果を応用することで、牧場や育成場における病気や故障を防ぐことや、健康で魅力ある競走馬を育成することに繋がり、ばん馬の維持・確保に貢献できる研究になればと考えています。
楽天競馬で馬券を買って
ばんえい競馬を応援しよう
この研究は、「ばんえい十勝応援企画」の一環として、皆様の楽天競馬でのばんえい競馬における馬券売上の一部を還元して研究費を拠出しております。
ぜひ楽天競馬でばんえい十勝の馬券を購入し、楽しみながらばんえい競馬の支援にご参加ください。
詳しくはこちら >